『星と嵐』

かつて、日本の登山家たちはこの本を読んで、アルプスに思いを馳せ、夢に見、憧れに胸を焦がせた。
その原書、Étoiles et tempêtes (1954) を手に入れたことは、過去ブログにも書いた。

昨日、授業の中でバカンスについて話すうち、なぜか、この本の一節が頭に浮かんだ。
天候が急変して、ドリュ北壁でビバークを余儀なくされた著者たちが、
足元に広がる夜のシャモニーを描いた部分である。(pp.83-84)

朝の太陽の光が、川の上にかかる霧を徐々に溶かしていくのとは逆に、
夜になって、雲が層をなして広がり、シャモニーの渓いっぱいを覆い尽くして、
我々を下界から遮断した。
金色に輝く月が、真っ黒な夜の空に現れ、
その光のもと、降ったばかりの雪が、星々の塵くずのように光り輝いている。
ダウンにくるまりながら、わたしたちは「大地の骨」のゆりかごにゆられている。
心の中で、私たちは天空全体をこの手につかむ。
数えきれないほどの星の小道を、私たちは進んでいく。
冷たい風がかすかに吹く。
わたしたちは、かつて初めて山に登った人類たちのことを思う。
1800メートル下では、氷河の淵に点々と見える小さな湖が、宝石のように光を反射している。
右手には、雲の海が、風にかすかに揺れて、
眠りにつくシャモニーの街を覆い尽くしている…


大意拙訳は私。
なんて美しい光景なんだろう、そしてなんて美しいフランス語なんだろう。
登山家ギャストン・レビュファの書いたこの本の一節をフランス語で読むために、
世界で一番美しいフランス語を声に出して読むために、
たったそれだけのために、フランス語を習う価値がある、と私は思う(笑)。

次から次へと本を読み、そのたびに本を捨てるのが常習の私、
数少ない、ずっと手元に残している本の一冊が、この『星と嵐』である。
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by take_velo | 2012-10-26 05:43 | つれづれに思うこと | Trackback | Comments(0)

テニス・ボクシングのことを中心に思うことをつづってます。Pコーチはプライベートコーチの略、SPコーチはシングルスプライベートコーチの略です。長ったらしくなるので。


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